前回は、
InstagramやTikTokに制作過程を置く意味について書いた。
それ以降、
一つ曲を完成させるごとに、
簡単なショートムービーを作り、SNSに公開する。
それが、いつの間にか日課になっていた。
インストとして生まれた曲は、
少しずつ色を持ち、
世界観を深め、
そこに歌詞がのり、
歌が入り、
さらに映像が重なる。
音だけだったものが、
物語として立ち上がっていく感覚。
それはとても楽しかった。
ただ、
正直に言うと、
一つの世界観をきちんと作り上げる作業は、
それなりに消耗もする。
たとえAIを使っていたとしても、
作品に向き合い続けるのは、
根気のいる作業だった。
だから時々、
息抜きのつもりで、
まったく別の遊び方をしてみることがあった。
すでに作った曲を、
別のアレンジにしてみる。
弾き語り風にして、
「これ、自分で歌えないかな?」と考えてみたり、
ピアノソロにして、
「弾けたら気持ちいいだろうな」と想像してみたり。
AIは、
そんな軽い思いつきにも、
驚くほど真面目に応えてくれる。
そこで、ふと考えた。
――自分一人では、絶対にできなかったことを、
試してみてもいいんじゃないか。
思い浮かんだのは、
日本の伝統的な楽器だった。
琴、三味線、笛。
もちろん、
どれも触ったことすらない。
弾ける人が身近にいるわけでもない。
DTMの音源で見たことすらないし、
仮に音があったとしても、
どう使えばいいのかまったくわからない。
それでも、
恐る恐るプロンプトに
「koto」「shamisen」と入れてみた。
すると、
返ってきたのは、
驚くほど美しい、日本風のアレンジだった。
……これは、すごい。
制作の気分転換として、
そんなアレンジをいくつも試していった。
曲が少しずつ溜まっていく中で、
ある考えが浮かんだ。
海外の、
日本文化が好きな人たちに曲を届けるとしたら、
こういう伝統的な要素を含んだ音楽の方が、
魅力的に響くのかもしれない。
distrokidにも、
毎月お金を払っている。
使わないのは、もったいない。
――これも、作品として出してみようかな。
作品名は、ChatGPTと相談しながら考えた。
Koto + Electronic Music
= Kotolectric
悪くない。
ただ、
これは明らかに、
Bluepiece Lab.で作ってきた世界観とは違っていた。
そこで知ったのが、
distrokidのMusician Plusプランでは、
2組のアーティスト名義を登録できる
ということだった。
――じゃあ、別名義にしよう。
名前は、
harusame ao.(春雨 碧)
これも、
昔使っていたハンドルネームの一つだ。
Bluepiece Lab.が
世界観を丁寧に構築していく場所だとしたら、
harusame ao.は、
思いきりAIを使って実験する場所。
そう位置づけることにした。
実際に「Kotolectric」をリリースしてみると、
正直、
再生数はそれほど多くない。
でも、
日本以外の国の人たちが、
ぽつぽつと聴いてくれている。
これまでまったく意識してこなかった
「世界のマーケット」を感じる。
それもまた、
大きな学びだった。
「Falling Petals」というアルバムが
少しずつ形になっていく裏側で、
harusame ao.では、
別の制作も進んでいた。
日本の伝統楽器を使った「Kotolectric」。
そしてもう一つ、
アルバム「Melty」を
ジャズアレンジした作品。
A Jazz Café Bathed in Sunlight: Melty
午後のカフェで流れていそうな、
やわらかく、温かいジャズアレンジ。
仕事や制作で疲れたとき、
これを聴くと、不思議と落ち着く。
この頃には、
生活はすっかり音楽で満ちていた。
普通に仕事をして、
家族との時間も大切にしている。
その中で、
ほんのわずかに残った自由時間は、
すべて音楽と向き合う時間になっていた。
そして、
ついに――
アルバムの最後の曲を作り終える。
次回は、この連載のラスト。
第10回:アルバム「Falling Petals」について
ここまで続いてきたすべてが、
一つの作品として結実する話を書く。
🎬 本文で紹介した楽曲
※YouTubeで視聴できるようにしています
Stardust
Warm Night with Hot Milk
Pop Colors




