#8 クライシスの臨界

サーバータワーが、揺れている。

低い振動が、床から伝わってくる。
均一だったはずのノイズが、わずかに濁っている。

ライブ。
こんな状況で?

意味は、分からない。
けれど、他に方法がないことも分かる。

メンバーは、静かに集まってくる。
サーバータワーの内部、簡易スタジオ。

彼女はベースを構える。
指を置く。
いつも通りの位置。
いつも通りの圧。

合わない。
チューニングは狂っていない。
ドラムが刻む、正確なはずの時間。
それでも、音が重ならない。

違う――

これはズレではない。
音そのものが、変形している。
波打ち、伸びては、沈む。

ただの誤差ではない。
音が、意思を持って、何かを選んでいる。
既存の仕組みを塗り潰すのか、
あるいは、すべてを飲み込むのか。

視界が、わずかに滲む。

――まずい。

「お待たせ!」

軽い声が、空気を切った。
見慣れたシルエット。

「ありゃ、これはすごいことになってる?」

遅れていた二人が、そこにいた。

「さあ――ここからがライブだ」

次の瞬間。
サーバータワーの壁面が、開いた。
内側から光が溢れる。

都市全域へと接続される、巨大なステージ。
音は、街へ放たれる。

だが――

うねりは、止まらない。
むしろ、増幅していく。

音が音を侵食し、輪郭が崩れていく。
リズムはほどけ、旋律は歪み、すべてが混ざり合う。

視界が、消える。
どこまでが音で、どこからが自分なのか分からない。

そのまま、
視点が――失われた。


クライシスの臨界

午前二時
侵略の手はまだ止まない
交差点の信号だけが
規則正しく呼吸している

見えないセキュリティ
空いたヴァルネラブル
沈黙を待って
少しずつ意志を持つ

揺れている世界の針が
目に見えないほどの
わずかな角度で

ここは
クライシスの臨界
まだ何も壊れていない
それは目眩のように
予感だけが拡がる

脆弱なままの境界線
触れれば揺れる Current state
名前もないままの Relation
無音で走る Injection

総当たりの夜に紛れて
偶然だけを装って
正しさなんて後付けで
選ばれていく Simulation

踏み台みたいな感情で
どこまで行けるか試してる
軽いはずのその一歩が
やけに深く刺さってる

解けないふりの暗号化
隠した意味は透明だ
触れた瞬間消えるなら
最初から無かったみたいだ

触れれば
崩れる均衡
触れなければ
何も変わらない

明日はクラック

揺れている時間の地図が
目に見えないほどの
わずかな温度で

ここは
クライシスの臨界
誰も気づかれはしない
世界が傾いていく
誰もが夢に呑まれたまま

Bluepiece Lab.「クライシスの臨界」歌詞

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AIを使ったクリエイティブを行うプロジェクト。
音楽や小説を中心に、作品全体を「ひとつの物語」として構築することにこだわっています。
技術よりも感情、効率よりも余韻を大切に制作しています。

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