楽曲の世界観から生まれた短編を、電子書籍風のレイアウトでお読みいただけます。
1. 減っていく時間
白い天井は、もう何年も前から変わっていない気がした。
実際には何度か塗り替えられているのだろうが、少なくとも彼の記憶の中では、同じ白がずっと続いている。
午後の光が、カーテン越しに薄く広がっていた。
晴れているのか曇っているのか、その違いさえ曖昧だ。ただ、時間だけが静かに進んでいるのが分かる。
進んでいる、というより、減っていく、と言ったほうが正確かもしれない。
私はあまり思い出に浸るほうではありません。思い出というものは、ときに都合よく美化され、過去の引力が未来へ進む力を弱めてしまうこともあると感じているからです。
「ラスト・メモリーズ」は、そんな私があえて“思い出”と向き合ったとき、そこに浮かんだ物語を音にしました。
まだ起きていないはずの未来の情景。一度だけ思い出を探しに戻る瞬間があるのなら。そのときは、抗わずに浸ってもいいのではないか。そんな想像が、この曲の出発点でした。
結果として、どこか現実味の薄い、透き通るような美しさを帯びた音になったと思います。派手さはありません。けれど、繊細で、静かで、心の奥に触れるような一曲になりました。
この曲が、誰かにとっての“最後の思い出”ではなく、今を大切にするきっかけになれたなら。
— maurice blue
Producer / Bluepiece Lab.
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